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大阪地方裁判所 平成5年(ヲ)5697号 決定

申立人(債権者) 大阪新都市開発株式会社

代表者代表取締役 太秦俊一郎

代理人弁護士 中務嗣治郎

岩城本臣

森真二

村野譲二

加藤幸江

三浦和博

安保智勇

浅井隆彦

生口隆久

中光弘

相手方(債務者) 市之瀬汎

主文

別紙物件目録≪省略≫記載の土地について、相手方の占有(相手方の占有補助者である大阪府松原市三宅中≪地番省略≫松井慶司による占有を含む)を解いて、大阪地方裁判所執行官にその保管を命ずる。

相手方及び前記松井慶司は、上記土地を申立人の委任を受けた執行官に引き渡せ。

執行官は、上記土地が執行官の保管となっていることを公示するため適切な方法をとらなければならない。

理由

1  申立の趣旨及び理由の要旨

(一)  申立の趣旨

主文同旨

(二)  申立の理由の要旨

(1)  別紙物件目録記載の土地(以下「本件土地」という)につき、平成五年八月二〇日、相手方及び申立外石村徳子に対する建物建築禁止の保全処分がなされたが、その後も本件土地において建物の基礎工事が続行されている。

(2)  本件土地にかかる建築確認の内容を調査したところ、鉄骨造り一階建て床面積一三五・八八m2の建物の建築確認が建築主を松原市三宅中≪地番省略≫松井慶司(以下「松井」という)として建築確認がなされていることが判明した。

(3)  松井は、相手方が経営する不動産業(商号栄伝住建)の専務と称しているもので、相手方の腹心として、他の債権者に対する執行妨害にも関与しているもので、相手方と一体となって執行妨害を行なっているものと解される。

(4)  したがって、相手方は、松井を使用して本件土地上に建物を建築し、これを、各別の賃借人に賃貸することにより、執行の妨害を図ろうとしているもので、これを放置すれば、本件土地につき著しい減価が生ずるのは明らかである。

よって、請求の趣旨記載の保全処分を求める。

2  当裁判所の判断

(一)  本件土地につき、相手方他一名に対し、建築工事禁止を内容とする保全処分が発せられたことは、当裁判所に顕著であり、また、同保全処分に基づき、工事禁止の保全処分がなされたことの公示が執行官によってなされたことが、申立人提出の写真によって認められる。

(二)  申立人提出の資料によれば、更に次の事実が認められる。

(1)  前記保全処分発令及び公示後も、建築工事は変わりなく続けられていること

(2)  本件土地につき、松井を建築主とする鉄骨造り床面積約一三六m2の建物(用途は飲食店)の建築確認がなされていること

(3)  松井は、相手方が経営する不動産業栄伝住建の専務と記載された名刺を使用しており、他の事件で相手方に代って債権者(御堂筋ファイナンス及び本町中央産業株式会社)との交渉に関与しており、相手方と密接な関係があること

(三)  以上の事実によれば、相手方が、先行の保全処分に違反して、松井と一体となって本件土地上に建物を建築し、執行妨害を図っているものと一応認められる。

(四)  よって、民事執行法五五条二項に基づき、申立人に金一〇〇万円の担保(株式会社大阪銀行本店営業部による平成五年八月二七日付支払委託契約)を立てさせた上、主文の通り決定する。

(裁判官 富川照雄)

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